最近読んだ本にとても考えさせられる一文があった。
その本とは「謎の進学校 麻布の教え」という本だ。
麻布とは中高一貫の超進学校で、東大合格者数では毎年トップ争いをしている学校である。
この本では、そんな麻布の教育方針や授業の特徴などが紹介されている。
麻布に合格する子供の特徴
私は授業の特徴よりも、この学校に入学する子供たちの特徴について書かれた部分が強く印象に残った。
この学校の入学試験で特に重視しているのは「きちんと自分の頭で考えているかどうか」だという。
いくら知識があっても、いくら計算が速くても、自分なりの考えや物の見方ができない子供は合格できない。
「きちんと自分の頭で考える」というのは東大の入試でも重視されているポイントだと思われるので、そういう能力を持つ子供を入学させてさらに伸ばしていけば東大合格者数が多くなるのもうなずける。
しかもこのような能力は受験に限らず、これからの社会を生きていく上で非常に大切な能力になってくる。
なぜなら、これからのネット社会は情報の量よりもその情報を使ってどう考えるかが重要になってくるからだ。
子供の能力を伸ばす親、潰す親
この本ではさらに踏み込んで、麻布に入学する子供の家庭環境、特に親の特徴について書かれている。
子どもって先天的にみんな好奇心をもっていると思うんですよ。
それが家庭環境のなかで「これやりなさい、あれやりなさい」と言われる子どもは、自分の疑問をあと回しにする癖がつく。
でも、逆に家庭でいろんなことをお父さんと一緒に調べている子どももいる。
そういうことだと思うんですよね。
この言葉から3つの子育てパターンが考えられる。
- 子供の疑問に対して一緒に調べる親
- 子供の疑問を無視して、あれやれこれやれと言う親(教育ママタイプ)
- 子供の疑問も無視して、あれやここれやれも言わない親(放任タイプ)
パターン別「子供の成長」
パターン1は子供が自分の興味・関心を持った疑問に対して自分で解決する力を身に付けることができる。
これが「自分で考える力」を伸ばす教育だ。
このような能力を身に付ければ、これからの激動の社会をしっかりと生きていける。
そして、子供は自分の興味・関心を大切にしながら人生を送ることができる。
最も理想とする教育パターンだ。
パターン2はさらに2タイプに分かれる。
ずっと親の言うことを聞いて「良い子」を貫くタイプと、どこかでそれが破綻して親に反抗するタイプだ。
一見すると「良い子」は親の教育の成功に見えるが、本人の人生という視点から見ると必ずしも成功とは言えない。
子供のころは「良い子」でいれば褒めてもらえるが、大人になって自分の人生を自分で歩かなければならなくなったときに何もできなくなってしまう。
それに他人の言うことばかり優先して、自分のことをあと回しにしてしまう癖がつくので、自分のことを大切にできない人間になる。
これではいくら厳しくしても意味がない。
反抗タイプでは親も子供も無駄なエネルギーを使うだけで、教育という観点からするとあまり良いことはない。
子供は一見自由に行動しているように見えるが、その目的は「親への反抗」なので、自分を大切にするためにエネルギーを使うわけではない。
さらに、親への反抗をやめて自分の疑問に取り組むようになったとしても、その疑問への正しい答えの見つけ方を教えてくれる人がいないため、パターン3と同じようにエネルギーを無駄に使って成果が出せないという状態になってしまう。
結局、パターン2はどちらにしても子供は幸せになれない。
パターン3は「自由な子」に育つ。
このような子供は周りに束縛されず自分の興味に従って行動するので、自分を大切にする良い人生を送れると思われがちだ。
しかしこのような子供はパターン2の反抗タイプと同じように、自分の抱いた疑問に対する正しい答えの見つけ方を学ばないので、いつまでたっても成果につながる行動ができない。
つまりエネルギーの向け先はいいのだが、そのエネルギーを有効に使えないで終わってしまう。
きちんと子供の疑問に向き合ってますか?
結局、自分を大切にしながらこれからの社会で活躍ができる人間を育てるためには、子供の疑問を尊重して親が一緒になってその答えを見つける作業を手伝ってあげることだ。
子供の疑問は親からすれば下らない疑問かもしれないが、子供にとっては自分で考えて正しい答えを見つけるための第一歩なのだ。
その疑問にきちんと向き合ってあげることが一番の教育ではないだろうか。